仏教に登場する仏・菩薩・神々
#10
所要時間3分
鬼子母神は子どもを守護する神として位置づけられています。
なぜ「鬼」という言葉がついているのでしょうか?
講義で学べるポイント!
- 鬼子母神とは?
- 鬼子母神を司る有名寺院は?
- 十羅刹女とは?
行者の守護神「鬼子母神・十羅刹女」
子どもを護る神様として有名なのが、「鬼子母神(きそもじん)」です。
鬼女(きじょ)や訶梨帝母(かりていも) と呼ばれたり、尊称を付けて「鬼子母善神」「鬼子母尊神」などとされることもあります。
鬼子母神は、子どもを守護する神として位置づけられていますが、経典に依れば、法華経を信仰する者を守護する神ともいわれています。
鬼子母神とは?
お釈迦さま在世の頃、この鬼である女性が王舎城に出現しました。
人間の子供を奪って食うことを繰り返していた鬼がいます。
鬼には、500人や1000人の子どもがいたと伝えられています。ある時にお釈迦さまは、鬼より子どもを奪いました。
そうしましたら、鬼は大粒の涙を流して泣いたのです。
そこで、お釈迦さまは、鬼に対して、子どもの大切さを説いたのです。
お釈迦さまに教導され、五戒を受けて、鬼は改心をしました。
その時に、鬼の角が取れたと伝えられています。
そのような伝承から、鬼子母神の「鬼」字は、1画目目を書かず、それが、鬼に角が無いことを意味しているとされています。
日本では主として、安産・子育て・無事成長など、子どもに関する神さまとして信仰されております。
しかし、仏教に取入れられる以前のインドでは、「生産の神」として、信仰されたと考えられます。
単独で信仰されるほか、密教では普賢十羅刹女 (ふげんじゅうらせつにょ) の図中にも加えられることもあります。
また、その像容(すがた)は、=手に吉祥果(ざくろ)を持つ天女形(てんにょがた)と、祈祷の本尊とされる鬼形(きぎょう)との2種の形態があり、日蓮宗や法華宗を中心に広く信仰されています。
鬼子母神を祀る有名寺院
- 日蓮宗中山法華経寺(中山鬼子母神)
- 日蓮宗雑司ヶ谷法明寺(雑司ヶ谷鬼子母神)
- 法華宗入谷眞源寺(入谷鬼子母神)
十羅刹女とは?
鬼子母神とあわせて、法華経の中で護法の善神とされる10人の女性の神様がいます。
「十羅刹女(じゅうらせつにょ)」といい、羅刹(悪鬼)女のことをいいまして、『法華経』の26番目の章である「陀羅尼品(だらにほん)」に説かれています。
- 藍婆(らんば)
- 毘藍婆(びらんば)
- 曲歯(こくし)
- 華歯(けし)
- 黒歯(こくし)
- 多髪(たほつ)
- 無厭足(むえんぞく)
- 持瓔珞(じようらく)
- 皐諦(こうたい)
- 奪一切衆生精気(だついつさいしゆじようしようけ)
10人の羅刹女が仏前において、鬼子母神と共に陀羅尼神呪(だらにじんしゅ)を唱えて、「我等また法華経を読誦し受持せん者を擁護して、その衰患を除かんと欲す」と、法華経を信仰する者の守護を誓うのです。
十羅刹女はさらに、「説法者を悩乱せば、頭破れて七分に作(な)ること、阿梨樹の枝の如くならん」と、法華経の信仰者を悩ます者には、罰を下すことも誓っているのです。
行者の守護神「鬼子母神・十羅刹女」まとめ
鬼子母神と十羅刹女について、紹介しました。
法華経を信仰する者を、守護する神さまではありますが、ひろくは私たち一人一人を守護してくださる神さまでもあります。
もともとは鬼であった者も、お釈迦さまの教えを受けて、導かれることで、仏教者を守護する神さまとなるのです。
是非とも、鬼子母神を祀る寺院にお参りしてみてください。(康)