用語解説
#10
所要時間5分
今回は煩悩の中でも最も強力で私達を悩ませると言われている三毒(貪欲、瞋恚、愚痴)について説明していきます。
講義で学べるポイント!
- 三毒とは?
- 煩悩具足とは?
三毒とは?
衆生(生きとし生けるもの)の善心を害する、もっとも根本的な3種の煩悩を毒に例えたもののことです。
- 貪欲
- 瞋恚
- 愚痴
の3つの煩悩のことを指します。
略して貪瞋痴(とんじんち)ということも多いです。
ではそれぞれどんな煩悩なのか見ていきましょう。
貪欲
貪欲は財産などを貪り求め、飽くことのない煩悩ことです。
単に「貪」ということもあります。
これは簡単に言うと「もっと、もっと」という気持ちのことです。もっと欲しい、もっと食べたい、という欲があると、現状に満足できず、常に何かを求めている状態です。
それは裏を返すと、現状に何かが足りないと思っているということにもなります。
もし、現状に何かが足りないと思っているとしたら、今の自分を肯定できず、一生満足することは出来ません。
それは、常に餓えている、餓鬼の姿なのかもしれません。
私は、成長を目指し、常に高みを目指そうとする気持ちは大切だと思います。しかし、前提として今生かされている事に感謝して、今の状況に感謝することが重要だと思います。
かの有名なアクション俳優のブルース・リーはこんな言葉を残しています。
「幸せであれ。しかし決して満足するな」
もしかしたら、これは貪欲との正しい向き合い方を示してくれているかもしれないです。
瞋恚
いかり憎む気持ちのことです。
煩悩の中でも最も激しく衆生の善心を害し、仏道の障害になるため、瞋恚の炎というように火にたとえられることがあります。それほど強力ということですね。
憎しみの火がつくと、本当の炎のようにどんどんその火は強力になり、全てのものを燃え尽きるまで消えることはありません。
そしてある時、なにか大切なものを失ったと気づくのです。
確かに、生きていれば誰だって何かに怒り、憎しむ気持ちは湧いてくることだと思います。
しかし、その気持ちに執着してはいけません。
その怒りの気持ちに正しく向き合うことが大切なのです。
全ての事象には因果があります。
ということは、その怒りの気持ちにも必ず「原因」があります。
その原因を冷静に見つめることが重要です。例えば、同僚に言われた一言に怒りを覚えたとします。
私はなぜその一言に怒りを覚えたのか?この心を冷静に見つめるのです。
- 直前に上司に同じことを言われたから?
- 自分の仕事がうまくいってなくて苛立っていたから?
- 同僚の発言に悪意を感じたから?(なんで感じたのか?)
- もしかしたら、自分のあの時の発言が気に障っていたのかも…
などと、冷静に見つけるといろんな因果が見えてきます。
すると自然と怒りの炎は収まるものです。
愚痴
おろかでものの道理を解さないこと。
基本的には仏教の教えを知らず、また学ぼうともせず、どうりや物事を正しく見ることができないことを言います。
一般的には、仏教の教え以外にも、あらゆる物事を知らないことを指すこともあります。転じて今では、言っても仕方のないことを言って嘆くという言う意味にも使われる。(愚痴を言うというのはよくありますよね)
この愚痴の中で重要なことは「学ぶ姿勢」だと私は思います。誰しも、全ての物事を知っているとは限りません。
というよりむしろ、知らないことの方が多いのです。そしたら、そんな私達は愚かなのか?
そうです、愚かなのです。
だから私達はもっと謙虚に物事を学ぶ必要があるのです。にもかかわらず、学ぼうとしないと、何事も正しく判断することが出来なくなります。
そんな姿勢が無いことを愚痴というのです。
それでは私達は三毒に侵されていたらどうしたらいいのでしょう?
煩悩具足
仏教の教えに「煩悩具足」という言葉があります。
具足というのは備わっているという意味です。
つまり私達には煩悩が備わっているということになります。
だからといって、「煩悩があるのが当たり前だからいいんだ」と解釈してしまうとそれはまさに愚痴の状態です。
そうではなく、「誰しも私と同じ煩悩に悩まされているんだ」とまず自分を肯定してあげその後「今の悩みに向き合っていこう」と煩悩に向き合って少しでも煩悩を断ち切るよう精進する気持ちが大切なのです。
また「煩悩即菩提」という言葉もあります。これは煩悩がそれ即ち菩提になるという意味です。
菩提というのは悟りのことです。幸福と意訳してもいいかもしれません。
つまり、人は煩悩があってそれに向き合っていくからこそ菩提への道に繋がっている。ということなのです。
- 「涙の数だけ強くなれる」
- 「努力の数だけ成功に近づく」
これらの言葉も煩悩即菩提なのかもしれませんね。