STEP04
講義#05
所要時間3分
薬師如来について説明していきます。
講義で学べるポイント!
- 薬師如来の特徴は?
薬師如来
奈良県にあります法相宗(ほっそうしゅう)の大本山である薬師寺(やくしじ)は、国宝の薬師三尊(薬師・日光・月光)が祀られており、その中心はもちろん薬師如来であります。
ここでは、薬師如来について学ぶこととしましょう。
薬師如来は、その正式名称を「薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)」といいます。かつては菩薩の修行(菩薩行)をおこなっており、十二の願(がん)を発しました。そして、その願を完成したといわれ、衆生の病と苦しみを癒し、救うことができるとされています。
その12の願について、『薬師経』にたずねてみましょう。
1光明普照(こうみょうふしょう)
自らの光で三千世界を照らし、あまねく衆生を悟りに導くこと。
2随意成弁(ずいいじょうべん)
仏教七宝の一つである瑠璃(るり)の光を通じて、仏性(ぶっしょう)を目覚めさせること。
3施無尽物(せむじんぶつ)
仏性を持つ者たちが、悟りを得るために欲する物品を施すこと。
4安心大乗(あんしんだいじょう)
世の外道(げどう)を正し、衆生を仏道へと導くこと。
5具戒清浄(ぐかいしょうじょう)
戒律を破ってしまった者も、戒律を守れるようにたすけること。
6諸根具足(しょこんぐそく)
生まれつきの障碍・病気・身体的苦痛を癒やすこと。
7除病安楽(じょびょうあんらく)
困窮や苦悩を除き払えるようにたすけること。
8転女得仏(てんにょとくぶつ)
成仏するために男性への転生を望む女性をたすけること。
(※薬師経では、女性の身体のままでは成仏することはできないとされている)
9安心正見(あんしんしょうけん)
一切の精神的な苦痛や煩悩を浄化できるようにたすけること。
10苦悩解脱(くのうげだつ)
重圧に苦しむ衆生が解き放たれるようにたすけること。
11飲食安楽(おんじきあんらく)
餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除くこと。
12美衣満足(みえまんぞく)
困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施すこと。
このように、12におよぶ願にみられるとおり、薬師如来は人々に現世の利益を与えることが、特徴のひとつであるといえましょう。そのため、中国や日本では、古来より薬師信仰が盛んであったのです。とりわけ日本では、法隆寺や薬師寺の薬師仏にみられるように、造像が積極的におこなわれました。
薬師如来の姿は、左手に薬壺(やっこ)を持つことがひとつの特徴とされています。また、日光菩薩(にっこうぼさつ)と月光菩薩(がっこうぼさつ)を脇侍(きょうじ・わきじ)とするのです。
『薬師如来瑞応伝(やくしにょらいずいおうでん)』には、江戸時代の薬師信仰の盛んな様子をみることができるとともに、民間においては眼病などの治療にも効験があるとして信仰されています。
薬師如来は私たちに現世利益をもたらしてくださるのです。是非とも、その恩恵をいただいて、豊かな生活を築いていきたいですね。(論)