コラム11

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所要時間3分

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講義で学べるポイント!

仏教で避けるべき食事「五辛」

参拝者の気遣い

新年に当たり、今年の年内安全や家運栄昌を祈るため、現下のコロナウイルスに気を付けながらも、お寺へのお参りをいただいている。
私が住む地は、たいへんな田舎であって、最近でこそ、御布施として「金銭」を持ってきていただけるが、一昔前は、米や野菜でのお供えがほとんどであった。
その名残もあってか、現在でも熨斗袋と共に、米や野菜を供えてくださる檀信徒が多くいるのである。

今日も、そのような参拝者が多かったが、そのうちの一人が「ある野菜」をお供えしつつ、次のように言った。

お寺さんにこの野菜をお供えするのは申し訳ないが、今年も一生懸命に作ったので、気持ちばかりですがお供えをさせてください

皆さま、お分かりであろうか?
お供えをしてくださった参拝者が持ってきた野菜がなんであるのか?
さらには、お寺の御宝前にお供えをするには、好ましくないとされている野菜があることは、ご存じであろうか?
今日、お供えをいただいたのは「ニラ」である。なぜ、それをお供えすることをタブーとされるのであろうか?

避けるべき食事とは?

仏教においては、その食事を「精進料理」ということもある。
その精進料理においては、避けるべきと考えられている食材が、大きく分類して2つある。

①三厭(さんえん)
動物性の食材のことで、獣、魚、鳥のことであるが、動物の全てを指すこともある。

②五葷(ごくん)
※五辛ともいう。
ネギ属などに分類される野菜のことである。

これらは、仏教においては避けるべき食事ともされている。今日の私は、「ニラ」をいただいたわけだが、それが含まれる「五辛」について考えてみたい。

五辛とは?

仏教では、食べることを禁じられていた5種類の辛みのある野菜のことであり、五葷ともいうのである。

一説には、
にら
ねぎ
にんにく
らっきょう
はじかみ (しょうが・さんしょう)
などである。
※諸説あるため、他の解釈は後述

現在ではほとんど意味をもたなくなっているが、本来の仏教においては、避けるべき食事でもある。

また、一般的に五辛といえば、
ニンニク
タマネギ
ネギ
ニラ
ラッキョウ
とネギとタマネギが重複する説もあり、先に挙げたものとは、微妙に異なっている。

また、他の解釈としては、以下の説が確認できている。

『楞厳経』
大蒜(ニンニク)
小蒜(ラッキョウ)
興渠(アギ)
慈葱(エシャロット)
茖葱(ギョウジャニンニク)
<五厭の場合>

『梵網経』
葱(ネギ)
薤(ラッキョウ)
韮(ニラ)
蒜(ニンニク)
興渠(アギ)

『楞伽経』
大蒜(ニンニク)
茖葱(ギョウジャニンニク)
慈葱(エシャロット)
蘭葱(ニラ)
興渠(アギ)
<五辛の場合>

重複をしている野菜もあるが、ここで挙げたものでは、アギのみがセリ科の植物であり、それ以外の全てはネギ科ネギ属の植物である。ネギが、如何に刺激を与える強いものであるかが窺えよう。

「五辛」を避けるべき理由

ネギやニンニクなどの五辛を食べることで、情欲や憤怒 (ふんぬ) を増進するといわれていることから、禁じられている。
昨今は、サプリメントも流行っており、「元気になること」を目的に、ニンニク成分が入っているものも多く見受けられる。
興奮作用や情欲を促す成分が含まれていることから、仏教においては、その修行の妨げになるとも考えられていたのである。だからこそ、それを御宝前に供えることもタブーとされ、さらには僧侶に提供することも忌み嫌われていたのである。
とはいえ、最近では「五辛」を気にしてなにかをすることはほとんどなく、お寺としても有り難く頂戴した次第であるが、そのようなことを未だに気遣ってくださる肩がいることに驚かされたのである。

むすびにかえて

刺激が強く、仏道修行を妨害することになるかもしれないという意味から、仏教における食事で避けられているのが、五辛です。現代ではなかなか考えづらい部分もありますが、仏さまにお供えをせず、同時に、僧侶も食することのなかった五辛なのです。

とはいえ、私なりの補足ですが、冒頭に挙げた「ニラ」をお供えしてくださった参拝者の思いを無駄にすることはいけないですから、御宝前にありがたくもお供えをし、私たちで頂戴しました。かつては、ネギやニラは避けるべきものでありましたが、現在では、それらのものも心を込めてお供えをしてくださったわけですから、そのような意味で、仏さまが怒ることはないでしょう。
価値観というのは、時代にあわせて変わることもあります。その一方で、変えてはならぬこともあります。そのことを実感させられたエピソードでしたので、本日のコラムにてご紹介させていただきました。