コラム
#09
所要時間3分
「恩」について仏教を通じて考えてみる
「恩」といってもいくつかの解釈がありますので、主なものを確認し、仏教における「恩」について考えてみましょう。
講義で学べるポイント!
- 四恩とは?
- 知恩報恩の考え
「恩」について仏教を通じて考えてみる
「恩に報いる」や「ご恩に感謝する」など、日常生活で「恩」と聞くことは多くあります。
本来、「恩」とは自然や大地の恵みを意味したり、神々の恵み(愛まど)や仏の恵み(慈悲など)のことを指しますが、中国や日本では、君主・天王・国王や親・知人からもたらされる恵みという考えが、恩と重なって理解されるようになってきました。
ここでは、「恩」といってもいくつかの解釈がありますので、主なものを確認し、仏教における「恩」について考えてみましょう。
四恩
仏教では、あらゆる恵や恩などがあらわされていますが、特に重要な4つの恩「四恩(しおん)」があります。
この4つが、どのような内容であるのかが、経典や著述によって少しずつ異なっていますので、ここでは3つの解釈を紹介します。
『心地観経(しんちかんぎょう)』
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- 父母の恩
- 一切衆生の恩
- 国王の恩
- 三宝の恩
『釈氏要覧(しゃくしようらん)』
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- 国王の恩
- 父母の恩
- 師友の恩
- 檀越の恩
『報恩抄(ほうおんじょう)』〈日蓮聖人(1222‐1282)著〉
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- 父母の恩
- 師匠の恩
- 三宝の恩
- 国の恩
いずれの解釈にも共通しているのは、父母の恩と国の(国王)恩であります。
出家者であれども、両親の存在を忘れてはならず、宗教と政治の深い関与が望ましくないとは理解しつつも、世俗的国家の中では、国家や国主の恩をも受けているのです。
そのことを、「恩」より教えられている気がしてなりません。
そして2つに共通している内容として、三宝(仏・法・僧)の恩、師匠の恩が挙げられます。
一切衆生への恩や、檀越(信者)への恩なども、仏教に生きる者として、忘れることは出来ない存在であります。
「恩」についてまとめ ~知恩報恩~
恩について考えますと、「知恩報恩(ちおんほうおん)」という語句があります。
恩を知りて恩に報いることを意味しています。
私たちには、自らの力だけで生きている者はおらず、常に多くの支えによって生かされているのです。
そのような恩恵を知り、さらにはその恩恵に対して報いるという生き方をしなければなりません。
先に学びました「四恩」に見られるように、身近なところでは両親に対する恩であり、世俗的な国家として考えれば国王・国主への恩も忘れてはなりません。
また信仰的な立場からは、仏法僧の三宝への恩や師匠や信者への恩も大切なことです。ひいては、一切衆生(すべてのもの)への恩へとつながるのでしょう。
私たちは、万物への恩を忘れること無く、仏道修行に精進していきたいと念願するばかりです。(康)